生命医科学部

医生命システム学科/大学院 医生命システム専攻

DEPARTMENT OF MEDICAL LIFE SYSTEMS / GRADUATE
SCHOOL, MAJOR OF MEDICAL LIFE SYSTEMS

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西川恵三教授の研究成果が「microPublication Biology」に掲載されました。

生命医科学研究科 西川恵三教授は、本研究科大学院生 竹上陽菜さんとジョンズホプキンス大学 瀬崎博美准教授とともに、ミトコンドリア融合の制御因子Opa1が破骨細胞分化において重要な役割をもつことを発見しました(図)。

骨は、骨を壊す破骨細胞と骨形成を担う骨芽細胞の協調作用によって、絶えず新陳代謝を繰り返す組織です。破骨細胞の形態的な特徴の一つとして、ミトコンドリアが豊富に存在することが古くから知られていますが、破骨細胞におけるミトコンドリアの生理的意義は不明な点が多い現状にあります。ミトコンドリアは、エネルギー、代謝物、熱、カルシウムイオンや活性酸素種の産生源として、様々な細胞機能に影響を及ぼすオルガネラです。このミトコンドリアは、細胞内で融合と分裂を繰り返し、ダイナミックに形態を変化させることで、細胞機能の調節にかかわると考えられています。本研究は、ミトコンドリアのダイナミクスに着目し、破骨細胞分化制御におけるミトコンドリアの役割解明に取り組みました。

西川恵三教授は、公共データベースに登録されている破骨細胞形成過程のシングルセルRNA-seqデータを再解析することで、破骨細胞分化の全過程でトコンドリア融合の制御因子Opa1が高発現していることを見出しました。そこで、破骨細胞分化におけるOpa1の役割を明らかにするために、破骨細胞特異的にOpa1遺伝子を欠損させたマウスを作出しました。その結果、Opa1遺伝子の欠損によって、ミトコンドリアのクリステ構造が異常を呈し、破骨細胞分化に伴って誘導される機能遺伝子の発現が抑制されるとともに、破骨細胞分化が阻害されることが明らかとなりました。

20世紀初期の建築家ルイス・サリヴァンの言葉である「Form follows function」は、無機的なオブジェクトの形状が、その機能に従属するものであることを表していますが、これは往往にして生命体である細胞にも当てはまります。即ち、破骨細胞では、細胞分化に伴ってミトコンドリアの生合成が高まり、細胞内容積を占めるミトコンドリアの割合が高まるこの特徴的な細胞内形態は、まさに破骨細胞分化の制御に必要不可欠なミトコンドリア機能を獲得するための仕組みであったと本研究の結果から解釈できます。ミトコンドリアの機能は、実に多彩であり、代謝、細胞死やオートファジーなどの種々の細胞内現象の制御にかかわります。今後、破骨細胞内部を大きく占めるミトコンドリアが、どのような作用によって破骨細胞分化を制御するのかの詳細解明が求められます。これは、真核生物に欠くことのできないミトコンドリアがもつ新たな機能解明につながり、生体におけるミトコンドリアの役割の理解深化を促進することにつながることが期待されます。

論文タイトル: Opa1-mediated mitochondrial dynamics is important for osteoclast differentiation

DOI: 10.17912/micropub.biology.000650著者: Keizo Nishikawa (corresponding author), Hina Takegami and Hiromi Sesaki