遺伝情報研究室の和久剛助教、片山寛之くん、小林聡教授らの研究成果が「Molecular and Cellular Biology」に掲載されました。
転写因子NFE2L1とNFE2L3による新たながん増悪メカニズムの発見
–がん細胞のタンパク質分解は翻訳を介してコントロールされている–
タンパク質分解酵素であるプロテアソームは、正常な細胞だけでなく癌細胞の生存や増殖にも必須であることが知られています。しかし、プロテアソームが癌細胞でどのようにコントロールされるは不明のままでした。
我々の研究室ではこれまでに、プロテアソーム構成遺伝子の発現をコントロールする転写因子NFE2L1とNFE2L3を同定してきました。また近年、NFE2L3が結腸直腸癌などのいくつかのタイプの癌で高度に発現しており、腫瘍増大や転移促進といったがん増悪に寄与し、予後不良の要因となることを明らかにしています。本研究では、NFE2L3が翻訳調節因子CPEB3を直接転写することでNRF1の翻訳を制御し、結果として癌細胞のプロテアソーム構成遺伝子の発現を補完的に維持していることを見出しました。またNFE2L3-CPEB3-NFE2L1軸が、プロテアソーム阻害を目的とした抗がん剤であるボルテゾミブの感受性や大腸癌患者の予後にも影響を及ぼすことも確認しました。
以上の本研究成果は、癌細胞のタンパク質分解のコンロトールを目的とした新たな抗がん剤開発につながると期待できます。
研究内容の詳細は、以下の関連情報をご覧ください。
論文タイトル: NFE2L1 and NFE2L3 Complementarily Maintain Basal Proteasome Activity in Cancer Cells Through CPEB3-mediated Translational Repression
Doi: 10.1128/MCB.00010-20.
著者:Tsuyoshi Waku*, Hiroyuki Katayama*, Miyako Hiraoka, Atsushi Hatanaka, Nanami Nakamura, Yuya Tanaka, Natsuko Tamura, Akira Watanabe, Akira Kobayashi (*equal contribution)
原著論文(プレプリントリポジトリbioRxiv):