生命医科学部医生命システム学科システム生命科学研究室の浦野泰臣准教授、野口範子教授らの研究成果が2022年10月付「Cell Death Discovery」に掲載されました。
アルツハイマー病やパーキンソン病患者の脳では、脳特異的オキシステロール(酸化されたコレステロール)である24S-hydroxycholesterol(24S-OHC)が増加することが知られ、神経変性疾患発症への関連が示唆されています。これまで本研究グループは24S-OHCが神経細胞に特殊な形態の細胞死を誘導することを示してきましたが、その詳細な機構は明らかにされていませんでした。
本研究では、24S-OHC誘導性細胞死の初期に、acyl-CoA:cholesterol acyltransferase(ACAT)によりエステル化された24S-OHCが小胞体の膜構造を破綻させ、統合的ストレス応答(Integrated stress response)と呼ばれる現象が引き起こされることを見出しました。またその下流で起こる現象として、相分離によりストレス顆粒が形成されることや新生タンパク質の翻訳抑制が起こることも明らかにし、これらの現象が複合的に起こることが、特殊な細胞死の引き金となっていることを明らかにしました。本成果は活性酸素、紫外線、ウイルス感染等のストレスの適応に重要であるとされる統合的ストレス応答が脂質である24S-OHCにより誘導されることを明らかにし、その活性化の阻害が神経細胞死の抑制や治療薬の開発につながる可能性を示したものです。
本成果は、科研費基盤C(16K08254、19K07093:浦野泰臣)の支援により得られたものです。
研究内容の詳細は、以下の関連情報をご覧ください。
関連情報:
URL: https://www.nature.com/articles/s41420-022-01197-w
DOI: 10.1038/s41420-022-01197-w
著者:Yasuomi Urano, Shoya Osaki, Ren Chiba, Noriko Noguchi
タイトル: Integrated stress response is involved in the 24(S)-hydroxycholesterol-induced unconventional cell death mechanism
雑誌: Cell Death Discovery, (2022) 8: 406.