高橋 美帆助教、西川 喜代孝教授らの研究成果が2022年7月 6日付「Scientific Reports」に掲載されました。志賀毒素(Shiga toxin : Stx)は、O157:H7に代表される腸管出血性大腸菌が産生する極めて毒性の強い毒素です。Stxは、標的となる細胞のタンパク質合成を阻害することで細胞を殺す、いわゆる毒素本体であるA-サブユニットと、標的細胞上に存在する受容体を認識し、A-サブユニットを細胞内に届ける働きを持つB-サブユニット5量体から構成されています。本研究グループはこれまでに、Aサブユニットの触媒部位に特異的に結合することでStxの毒性を阻害するペプチド分子MMβA-monoを同定し、さらにX線結晶構造解析によりその結合様式の詳細を解明しています。今回の研究では、生化学的解析、結晶構造解析、ならびに分子動力学的手法を用いて本結合に必要不可欠なMMβA-monoの領域を特定し、ファーマコフォアを決定しました。さらに、得られたファーマコフォアを用いたファーマコフォアスクリーニング、ならびにドッキングシミュレーションにより、約740万種類の低分子化合物の中からStxの毒性を効率よく阻害する化合物を1種類同定することに成功しました。本成果は、腸管出血性大腸菌感染症に対する新たな治療薬開発に貢献すると考えられます。
研究内容の詳細は以下の関連情報をご覧ください。
関連情報:https://www.nature.com/articles/s41598-022-15316-1
論文タイトル
A unique peptide-based pharmacophore identifies an inhibitory compound against the A-subunit of Shiga toxin
著者
Miho Watanabe-Takahashi#, Miki Senda#, Ryunosuke Yoshino#, Masahiro Hibino, Shinichiro Hama, Tohru Terada, Kentaro Shimizu*, Toshiya Senda*, and Kiyotaka Nishikawa*
# Equal contributor, *corresponding author
雑誌名
Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-022-15316-1