生命医科学研究科 医生命システム専攻 分子生命分野 博士課程3年佐藤和佳さん、高橋 美帆助教、西川 喜代孝教授、ならびに神経科学分野 舟本 聡准教授らの研究成果が「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました。アルツハイマー病(AD)は、アミロイドβ(Aβ)が脳内で異常蓄積することで発症すると考えられていることから、Aβの産生を抑制することはADの治療に重要です。本研究グループは、O(オー)157などの腸管出血性大腸菌が産生する毒素、志賀毒素(Shiga toxin:Stx)を無毒化し、Aβを産生する細胞に与えると、Aβの産生が抑制されることを見出しました。通常AβはAPPと呼ばれる前駆体タンパク質が切断されることによって産生されますが、この無毒化Stxは細胞の中でAPPに寄り添い、その結果APPのリソソームでの分解を誘導することでAβ産生を抑制していることがわかりました。細胞の外から加えることでAPPの分解、さらにはAβの産生抑制を誘導する分子はこれまで報告がなく、新しいAD治療法の確立に発展すると期待されます。
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関連情報:
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X21006112
論文タイトル:A nontoxigenic form of Shiga toxin 2 suppresses the production of amyloid β by altering the intracellular transport of amyloid precursor protein through its receptor-binding B-subunit.
著者: Waka Sato, Miho Watanabe-Takahashi, Takashi Hamabata, Koichi Furukawa, Satoru Funamoto, Kiyotaka Nishikawa
雑誌: Biochemical and Biophysical Research Communications, 2021, Jun 11;557: 247-253.